アフリカ布の起源とは?植民地時代と産業革命が生んだワックスプリントの歴史
アフリカンプリントのカラフルな布を見て、「これって本当にアフリカの伝統文化なの?」と疑問に思ったことはありませんか?実は、私たちが「アフリカ布」と呼んでいるワックスプリントには、ヨーロッパとアジアを巻き込んだ、驚くべき歴史的背景があるのです。

この記事では、17世紀から始まるアフリカ布の起源と、植民地時代・産業革命がどのように現代のアフリカンファッションに影響を与えたかを詳しくご紹介します。
✨ この記事で分かること
- アフリカ布(ワックスプリント)の本当の起源
- 17世紀から始まるヨーロッパとアフリカの貿易史
- オランダ・インドネシア・アフリカを繋ぐ意外なストーリー
- 産業革命がアフリカンファッションに与えた影響
- 現代のアフリカ布製品を選ぶときのポイント
結論:アフリカ布の起源は「ジャワ島のバティック技術」
私たちが「アフリカ布」と呼んでいるワックスプリントは、1893年にジャワ島で生産されたロウで防染する技術を活用した布がアフリカに持ち込まれたものが起源です。
しかし、そこに至るまでには、ヨーロッパの産業革命、オランダによるインドネシア支配、そしてスコットランド商人による市場開拓という、複雑で興味深いストーリーがあります。
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商品一覧を見る17世紀:ヨーロッパからの生地輸入が始まる
遡ること17世紀。アルフェルト・ダッペル著「アフリカについての記述」によると、17世紀からアフリカではヨーロッパから生地の輸入が始まったことが記載されています。

この貿易は「イントゥリカ(インディア・トゥ・アフリカ)」と呼ばれ、マドラスチェックや手作業のプリント生地がアフリカに大量に運ばれていました。興味深いのは、インドで綿布を生産し、イギリスやフランスまで運び、そこでインド更紗を生産するという複雑なルートです。

なぜヨーロッパ経由だったのか?
当時のヨーロッパ列強は、植民地支配によって原材料を安く調達し、自国で加工して高く売るという「三角貿易」を行っていました。この構造が、後のアフリカ布誕生の土台になるのです。
18世紀:産業革命による大量生産時代の到来
18世紀末、産業革命により生地生産は劇的に変化します。
産業革命がもたらした2つの革新
- 「飛び杼」の発明:織物の生産スピードが飛躍的に向上
- 「ローラープリント機械」の発明:プリント柄の大量生産が可能に

出典:Wikipedia
さらに、蒸気船の登場により、ヨーロッパ-アフリカ-アジア間の移動時間が大幅に短縮されます。これにより大陸間貿易が加速し、テキスタイル産業は爆発的に成長しました。
19世紀:宣教師によるヨーロッパ文化の普及
19世紀になると、プロテスタント宣教師がアフリカで布教活動を開始します。彼らは宗教と共に、アフリカの女性たちに縫製技術を教えたのです。
ここでヨーロッパ製の薄い布が大好評となり、ヨーロッパのドレスコードが急速に普及していきます。これが、後にアフリカ独自のファッション文化と融合する土台となりました。
ジャワ島:オランダの野心とバティック技術
1816年:オランダによるジャワ島返還

1816年、ジャワ島がオランダに返還されると、オランダ企業はアジアンテイストを取り入れた新製品開発でシェア獲得を狙います。
1830年にハーレムコットン社がインドネシアのテキスタイル輸出の独占権を獲得。その後、以下の企業が次々と参入します:
- 1834年:プレヴィネール&ウィルソン社
- 1846年:P.F.ファン・フリシンゲン社(現フリスコ社)
ロウ防染技術の導入とジャワでの敗北
オランダ企業は「溶かしたロウで防染する技術」と「目立つ部分や裏地には手書きのモチーフを入れる」技法を用いて、ジャワ島のエリート層への浸透を図ります。

しかし、本場のジャワ産バティック染めには勝てませんでした。巨額の投資をしたオランダ企業は、新たな市場を探す必要に迫られます。
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1893年:アフリカへの持ち込みと爆発的ヒット
スコットランド商人の慧眼
オランダ企業が余剰在庫に悩む中、スコットランド商人エベネゼール・ブラウン・フレミングが重要な情報を得ます。
宣教師たちから、「ジャワ島からガーナに持ち帰ったバティックが現地で人気になっている」という話を聞いたフレミングは、「ここに需要がある!」と直感しました。
そして1893年、初めてオランダ工場製のバティック染め布をアフリカに納品したのです。これが「アフリカ布」誕生の瞬間でした。

なぜアフリカで大ヒットしたのか?
ジャワでは失敗したワックスプリントが、アフリカで爆発的に人気になった理由は以下の3つです:
- カラフルで大胆な柄が、アフリカの美意識にマッチした
- 丈夫で洗濯に強いワックス加工が、アフリカの気候に適していた
- すでにヨーロッパ製生地への憧れと信頼感があった
こうして、ヨーロッパの技術、アジアのデザイン、アフリカの文化が融合した「アフリカ布」が誕生したのです。
まとめ:複雑な歴史が生んだ文化的アイコン
「アフリカ布」と聞くと、アフリカで生産された伝統文化というイメージがありますが、実際には以下の要素が複雑に絡み合って誕生しました:
- ヨーロッパによるインド更紗などの生地の輸出
- 産業革命による大量生産技術の確立
- オランダによるジャワ島のバティック技術の模倣
- オランダ企業の余剰在庫活用の必要性
- スコットランド商人によるアフリカ市場への導入
- アフリカの人々による独自の文化への昇華
現在では、この「アフリカ布」は西アフリカを中心にアフリカ人のアイデンティティの象徴となっています。植民地時代の複雑な歴史を経て、アフリカの人々が自分たちの文化として受け入れ、昇華させたのです。
よくある質問(FAQ)
Q1: 現在のアフリカ布はどこで生産されていますか?
A: 現在も主にオランダ、中国、インド、そして西アフリカ諸国(ガーナ、ナイジェリアなど)で生産されています。近年では、アフリカ現地での生産も増えており、地元経済に貢献しています。
Q2: アフリカ布製品を購入することで、どんな社会貢献ができますか?
A: ナイジェリア産のアフリカ布など、アフリカ現地で生産された製品を購入することで、現地の雇用創出と経済発展に直接貢献できます。特に女性職人が多く関わっているため、女性の自立支援にも繋がります。
Q3: ワックスプリント(アフリカ布)の特徴は何ですか?
A: 最大の特徴は「ロウ(ワックス)による防染技術」で作られた、表裏同じ柄が特徴です。丈夫で色落ちしにくく、独特の光沢があります。洗濯を重ねるごとに柔らかくなり、長く愛用できます。一方、現在市場に出回っている多くの製品は、機械で印刷されたプリント生地となっており、ワックスプリントよりも廉価なため、アフリカ各国の庶民に使用されています。
Q4: アフリカンプリントの柄には意味があるのですか?
A: はい、多くの柄には名前と意味があります。例えば「God is with us(神は私たちと共にいる)」「Unity(団結)」など、社会的なメッセージが込められていることが多いです。
Q5: アフリカ布製品のお手入れ方法は?
A: 最初の数回は色落ちする可能性があるため、単独で洗濯することをおすすめします。洗濯機使用可能ですが、裏返しにしてネットに入れると長持ちします。アイロンは中温で裏側からかけてください。
Q6: サイザルバッグとアフリカ布の違いは何ですか?
A: サイザルバッグは、サイザル麻という天然繊維を手編みで作るバッグで、布を使いません。どちらもアフリカの伝統的なクラフトですが、素材と製法が異なります。当店では両方を取り扱っています。
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この記事を書いた人
CROSS TRADE 代表 辻 薫
アフリカ雑貨とエシカルアイテムを通じて、生産者と消費者をつなぐ活動をしています。
2023年からアフリカ雑貨の輸入販売を開始し、現地の職人技と文化の素晴らしさをお届けしています。
参考文献
・ワックスプリント / アンヌ・グロフィレー著
・アフリカについての記述 / アルフェルト・ダッペル著


